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注意すべき朱肉の使い方と種類


そもそも、なぜ朱肉に「肉」の字が使われているのかご存じですか?

印鑑が使われる前は、血判が用いられていました。

血判とはその名の通り、自分の血を使って拇印を押すことです。

ですが判を押すたびに血を流すわけにはいかず、代わりに疑似血液を使うようになりました。それが朱肉の始まりだといわれています。

自分の肉体を切って判を捺していたので、「肉」という字をあてるようになった、というわけです。


別の説では、肉に似た色と弾力から朱肉という名前になった、とも言われます。




さて一言で朱肉といっても、いくつかの種類があります。

安いものから高価なものまで様々で、用途によって使い分けます。

間違った使い方をするとハンコを痛めてしまうこともありますので、注意しましょう。



そもそも朱肉とは、別名で印肉(いんにく)ともいい、捺印の際に使われる顔料をしみこませたもののことです。

大きく分けて「印泥」「練り朱肉」「スタンプ朱肉」があります。




■印泥(いんでい)



古来中国より使われる伝統的なもので、中国で採れる珠砂(硫化水銀系)に乾燥させたヨモギを合わせ、顔料で色付けし、油で粘度を整えたものです。

印影の鮮明さ、色の深み、変色やにじみが少ないなどが特徴で、落款印など石のハンコを捺す際にもよく使われます。

ただ若干乾きにくいのと、まめに手入れする手間が必要なため、上級者向けとも言えます。

長く放置すると朱と油分が分離してしまい、夏の暑さなどでもべとついてしまいます。その場合は、冷蔵庫で冷やしてから使うか、油とり紙などで油分を取り除く必要があります。




■練り朱肉


印泥と同じ意味で使われることがありますが、若干違います。

まず印泥が中国製なのに対し、練り朱肉は日本製です。

銀朱と呼ばれる硫化水銀を昇華させたものに顔料・植物や和紙の繊維を加え、ひまし油や松脂などで練り固めたものが練り朱肉です。材料も微妙に違います。

印泥よりもすこし固めで、こちらも時間が経つと顔料と油分が分離してしまいます。





■スタンプ朱肉


銀行や文具店、ホームセンターなどでよく見かけるのがこの簡易朱肉タイプです。

植物性の油脂や合成樹脂、化学物質に顔料で色を付けてインク状にしたものをスポンジに染み込ませた物です。

特に手間もいらず、安価で速乾性に優れているのが特徴です。

ですがスタンプ朱肉のインクは、色あせたり時間の経過により印影が薄くなってしまうことがあります。さらに水にも弱いです。

なのでその場しのぎな面が強く、長期保存には向きません。





ちなみに、ゴム印でよく使われるスタンプ台は朱肉とは別物です。


スタンプ台のインクは印材を変質させてしまう可能性がありますので、ハンコを使う際にはスタンプ台を使わないようにしましょう。

逆にゴム印で印泥や練り朱肉を使用すると、ゴムと朱肉の主成分である硫化水銀、または金属性顔料に油が化合じてゴムが腐食してしまいます。

スタンプ台はゴム印専用と思っていいと思います。



通常のハンコの場合は印泥か練り朱肉、ゴム印の場合はスタンプ台。

それぞれに合わせて作られたものですので、用途に合わせて使い分けるのが理想です。



ちなみに、印鑑ケースに付属してある小さな朱肉は、あくまで「朱肉がない場合の間に合わせ」程度に思ってください。

しっかりとした印影をとるには、しっかりしたものを使うことが大事です。

あえてケースの朱肉を入れずに販売するハンコ屋さんもいらっしゃいます。




■きれいに捺すコツ

ハンコに朱肉をつける際には、ぎゅーっと押し付けるのではなく、ポンポンと軽くたたくようにしてください。強くやりすぎると、印面の奥深くに朱肉が入り込み劣化の原因となります。

朱肉をつけたハンコを紙面につけ、「の」の字を書くようなイメージで全体に力をいれると綺麗に捺せます。


ぜひ、お持ちのハンコの印面を見てみてください。隙間に朱肉が溜まっていませんか? 

ハンコの寿命を縮めるだけでなく、きれいに捺せなくなる原因ともなりかねませんので、捺した後はなるべく綺麗に朱肉をふき取って次回に備えることをお勧めします。

特に和紙など表面がざらついたものに捺す際には、捺す部分を爪の表面や何か先の丸いものでこすって滑らかにすると捺しやすくなります。


ここで注意すべきことは、捺印の際には必ず、捺印マットやクッション性のあるものを使用してください。

綺麗な印影をとるためだけでなく、ハンコ自体への負担を減らすことにもつながります。

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